【書評】海辺のカフカ

なんとも独特な世界観を持つ小説である。15歳の家出少年「田村カフカ」君と、記憶を失った老人「ナカタ」さんの話が交互に並ぶ。お互いの話は、最初のうちは全く独立しているように感じられる。「最終的にはつながるんだろうな」と思っていても、両者の話があまりにかけ離れすぎているため、展開が読めない。
謎が多い小説でもある。例えば、カフカ少年の旅の目的も、ナカタさんの行動も、佐伯さんとカフカ少年の関係も、一切が謎に包まれている。カフカ少年が佐伯さんに問い詰めた時も、「仮説」にとどめるに過ぎず、結局物語の最後まで真相はわからない。筆者自身も、読者の解釈を重視しているようで、明確な答えは述べていない。

本書では、随所に文学と音楽の「古典」が登場する。「雨月物語」や「源氏物語」がところどころ引用され、重要な役割を果たす。また、音楽ではシューベルトのニ短調のソナタや百万ドルトリオによる「大公」がしばしば現れる。特に、シューベルトのニ短調のソナタは決してメジャーな曲ではないのだが、村上氏の独特の解釈が興味深かった。
読後の明瞭感はあまりなかったが、満足感は十分。読めば読むほど不思議な世界へと引き込まれていく。個人的に、本書は村上春樹の傑作の部類に入ると思う。
2008年03月21日 | | 書評・映画評などなど
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