ディヌ・リパッティの名演を聴く

ディヌ・リパッティは、1930〜40年代に活躍したピアニストである。活躍した時期が短い理由は、若くして白血病に倒れ、命を落としてしまったからである。彼の残した決して多いとはいえない録音はどれも素晴らしい輝きを放っているのだが、このCDもまた、かけがえのない宝物の1つである。
ディヌ・リパッティを語る上で外せないのが、バッハの「主よ人の望みの喜びよ」である。リパッティ自身もこの曲が好きで、何度かレコーディングされている。なかでもこのCDに収録されている音源は、そのまろやかなタッチがいいムードを作り上げている。涙せずには聞くことができない。
その他、ショパンの「舟歌」やリストの「ペトラルカのソネット」も素晴らしい。とくにペトラルカは、悲しげなメロディがリパッティの生涯を反映しているかのようで、儚い。ラヴェルの「道化師の朝の歌」も名演だ。決して荒々しくなく、それでいて冗長でもない。他のラヴェル作品も聞いてみたいものである。終曲のエネスコの「ピアノソナタ第3番」は、初めて聞く曲だったが、エネスコらしい、不思議な曲である。
2008年07月15日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・映画評などなど
高橋悠治ピアノコンサートに行ってきた
先日、今日とコンサートホールで行われた、高橋悠治ピアノコンサートに行ってきた。日本人の伝説的ピアニストの登場なので、前から楽しみにしていた公演である。発売初日にチケットを購入したため、前から3番目のとてもいい席で鑑賞出来る。
- バッハ:「平均率クラヴィーア曲集」第1巻より、変ホ短調
- バッハ:「平均率クラヴィーア曲集」第1巻より、ヘ短調
- バッハ:「平均率クラヴィーア曲集」第1巻より、ニ短調
- ブゾーニ:ソナティナ2番
- ブゾーニ:インディアン日記第1巻全4曲
- ブゾーニ:子守唄
- 高橋悠治:花形見2
- モンポウ:沈黙の音楽より抜粋
- 戸島美喜夫:鳥の歌
- アントニオ・カルロス・ジョビン:モディーニョ(アンコール)
- アントニオ・カルロス・ジョビン:ア・フェリシ・ダージ(アンコール)
ざっとプログラムを見てわかるとおり、バッハの平均率ぐらいしか聞いたことがない人は多いだろう。そして私もその1人である。このコンサートの直前にモンポウのCDは購入したが、他は未聴のままコンサートを迎えた。
いつもどおりの少々サイケデリックな衣装で登場。にこにこ笑いながら観客に向かってお辞儀。「ガンコオヤジ」と勝手にイメージしていたが、それとはずいぶんかけ離れている様子。さて、バッハの平均率は、そのタッチのやわらかさに驚いた。ふわふわと浮遊しているようなバッハで気分は上々。次はブゾーニの曲だが、きちんと予習をしておくんだと後悔。というのも、どれも難解な曲で、一度聴いただけで理解するのは難しかったのである。事実、私も始めて聞くこれらの局に少々戸惑ってしまう。
休憩を挟み、後半は高橋氏オリジナルの作品とモンポウ。三味線奏者の高田和子さんにささげるために作曲した、という花形見2(プログラムに掲載されている漢字は見つからず)であるが、現代バンザイといった印象の曲で、あまり理解できず。モンポウは、弾く曲をその場で決めているようで、何を弾くか楽譜をめくって考えていた。これは予習していたのでとても楽しめた。モンポウは悪くないですな。
バッハから始まり、一気に現代までタイムスリップした今回のコンサート。現代とか前衛は少し苦手かな。ただ、生きる伝説をこの目で見たことは大満足。次に高橋氏のコンサートに行く機会があれば、もう少し違ったプログラムも聴いてみたいものである。

2008年07月14日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 音楽のある生活
【映画評】愛情物語

1930年代に絶大な人気を誇ったジャズピアニスト、エディ・デューチンの生涯を描いた伝記映画。年配の方には、ショパンのノクターンop.9-2をこの映画の表題である「愛情物語」と呼ぶ人もいる。実際、このノクターンは随所に効果的に登場する。最後の親子共演のシーンは感動的ですらある。
さて、本作は、タイロン・パワー演じるエディが、偶然声をかけられたオーケストラマスターの言葉を頼りに、はるばるニューヨークに上京するシーンから始まる。社交辞令のつもりで言った言葉が本気で受け取られてしまったようで、帰郷を進められるが、銀行家の娘マジョリー(キム・ノヴァク)の後押しもあり、ピアニストの仕事にありつく。エディの腕前が認められ人気が爆発。そして、2人は恋に落ちていくのであった。
一見幸せそうに見える2人であったが、息子ピーターの出産が原因となり、マジョリーが死去。エディは自分と息子ピーターを攻め続け、以後数年間、会おうとしなかった。しかし、戦争の後エディの心境は変わり、空白の時間の穴埋めをしようと、息子に会いに行くのであった。
ピアノ演奏が元で息子との仲直りも果たし、人生はこれから、という時に、また悲劇が襲う。エディが白血病で倒れてしまうのだ。運命の皮肉を感じてしまう展開である。
一番好きなシーンは、戦争中、現地民とピアノを連弾するシーン。音の悪い古ぼけたピアノから奏でられるジャジーなハンガリー狂詩曲が忘れられない。
2008年07月10日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・映画評などなど
【映画評】若者のすべて

巨匠ルキノ・ヴィスコンティの名作映画。ミラノに移住してきた貧しいイタリア人一家の夢と挫折と愛憎を描いた少々重い映画である。というのも、登場人物が皆「ろくでなし」なのである。
一家には、とにかくお金がない。稼ぐために次男シモーネはボクシングを始めるが、自堕落な娼婦ナディアにつかまり、次第にボクシングにも影響が出始める。酒におぼれ盗みを犯し、堕落したシモーネは他の兄弟から家を出てくれとせがまれる。偶然、3番目のロッコはシモーネと同じ娼婦を愛してしまう。しかしこちらはシモーネとは違い、ナディアを1人の人間として扱い、ナディアは更正することができたのである。しかし、それに嫉妬したシモーネは怒り狂い、最後にはシモーネを殺してしまうのである。
この映画で描かれているのは「兄弟愛」と「堕落」。ロッコはいつでもシモーネをかばおうとするのだが、ナディアとの関係が発覚した時、彼女に「シモーネのところにもどっておやり」と言う。何が真実で何が正義なのか、考えさせられるシーンである。
ちなみにロッコを演じるのは若き日のアラン・ドロン。とてもかっこいいです。
2008年07月09日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・映画評などなど
フェデリコ・モンポウの芸術

今週末は高橋悠治のピアノリサイタルがあるのだが、その中で演奏される「モンポウ」という作曲家について、恥ずかしながら全く知識がなかった。そこで、モンポウの全ピアノ作品が収録されたこのBOXを購入し、勉強することに。これはモンポウ自身が晩年に収録した全集で、まさにモンポウ漬けのCDたちである。
フェデリコ・モンポウは、1893年にスペインはバルセロナに生まれ、1987年にバルセロナで没した。スペインを愛し、残した音楽はファリャ的でスペインの民族色が色濃い、と言いたいところだが、実際はむしろフランス近代風の内省的なモチーフが目立つ。消え入りそうなピアノの音色は、夜1人で聞くのにはうってつけだ。
正直、一聴するだけではモンポウの魅力は伝わりきれないかもしれない。というより、この音楽を好む人自体、あまりいないかもしれない。近代音楽が好きな人にはおすすめかな。先程も書いたが、私はもっぱら夜にモンポウを聞く。なぜかというと、昼間は生活騒音の生で、モンポウの音楽が全然聞こえないのだ。
2008年07月09日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 音楽のある生活
図らずもファリャ

CDを聴き始めて間違いに気が付いた。というのも、本当はフォーレのピアノ曲集を買おうと思ったのだが、間違ってファリャの全集を買ってしまったのだ。しかしまあ、ファリャのピアノ曲はほとんど持っていないのでよしとしよう。そんなわけで、期せずしてファリャのピアノ曲全集を手に入れてしまったのだ。
間違いにはすぐに気が付いた。だって、曲が派手すぎるものですから。ただまあ、ファリャもいいな、と思った。「幻想曲」とか「火の踊り」ぐらいしか知らなかったからほとんどの作品が初耳だったわけだが、どれもスペイン風で情熱的な音楽である。悪くないぞ、ファリャ。
2008年07月08日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 音楽のある生活
【書評】効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法

1つ確かなことは、ある程度の成功を遂げた人の生活スタイルは極めて似ているということ。そしてそれはこの本の著者、勝間和代氏にも言える。氏は慶應義塾大学商学部卒業。内部進学生で受験がなかったため、高校時代から勉強を始め、大学在学中に19歳で公認会計士試験2次試験に合格。その後は太田昭和監査法人(現在の新日本監査法人)(5ヶ月)、アーサー・アンダーセン(3年9ヶ月)、JPモルガン・チェース(3年)、マッキンゼー(5年9ヶ月)、再びJPモルガン・チェース(4年3ヶ月)を経て、経営コンサルタントとして独立。並行して早稲田大学商学研究科の博士課程に在学というツワモノである。
本書は全編を通じて「ライフ・ハック(人生をよりよく生きる方法)」について紹介しているが、一部スケジュール管理の方法や即毒の方法など、「ツール・ハック」的な記述もある。本書で一番協調していたことは、やはり「読書の大切さ」である。「読書」=「自分への投資」と考え、月に10万円以上を書籍代に費やす。移動は健康を考えロードレーサー(自転車)を愛用、鮭も煙草もせず、いわゆる「つきあい」はランチに限定。これを聴いて、「そんなの無理だ」と思う人は多いかもしれないが、もしかするとそこが「現実から抜け出せない」一番の理由かもしれない。
本書で救いだったのが、「積ん読(買っただけで読んでおらず、机に積んだままになっている本のこと)」は悪いことではないと言われたこと。現在私の机には、読んでない本が2山、計40冊ぐらい。ついでに、iPodに入れて整理していないCDが20枚ほど、そもそも聞いていないCDも100枚程。というとんでもない状況になっているのだが、これも悪いことではないと自分に言い聞かせ、少しずつ山を削っていく次第であります。
2008年07月08日 | 個別ページ | コメント(2) | トラックバック(0) | 書評・映画評などなど
興奮のウィンブルドンと全仏タオル
昨日のウィンブルドンはすごかった。日本時間で朝5時までの激戦だったけど、結局全部見てしまった。4年前からナダルを応援してきた私にとって、全英の覇者フェデラーという壁は、あまりにも大きな壁だった。ナダルVSフェデラーというのは3年連続の決勝カードであるが、年々試合内容が良くなっている印象。2年前はなすすべなく敗れたナダルであるが、去年は「あわや」と思わせる大善戦。第5セットまでもつれ込む激戦だった。
そして今年である。ナダルが2セットを連取した時は、このまま行くかな?という予感がよぎるが、その後フェデラーがタイブレイクの末2セットを奪取。2セットオールで第5セットを迎えることになった。そして両者は一歩も譲らず、自分のサービスゲームをキープし続ける。第15ゲームでナダルがやっとブレークに成功すると、そのまま試合が決まったのであった。
2度の中断をはさんだため、ウィンブルドンは暗闇の中。そんな中行われた表彰式が印象的であった。これでナダルはフェデラーの大会6連覇を阻止。新たな歴史が始まる予感がした一瞬である。
ところで、ウィンブルドンで盛り上がっている中、我が家に全仏オリジナルタオルが届く。


タオルが入った入れ物もおしゃれです。
2008年07月07日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | スポーツをする・観る
マルタ・アルゲリッチのショパン:ピアノ協奏曲集

アルゲリッチとデュトワのコンビ。今回はショパンの協奏曲2曲のアルバムである。この録音がなされた時、2人は既に離婚していたわけだが、関係が良好だったかどうかはわからない。しかし、曲を聴いて察するに、2人の個性が主張し合っており、協調(ハーモニー)が生み出されているとは考えられない。
とはいえ、アルゲリッチの情熱的なピアノは健在である。特に1番はなかなかの名演である。ただやはり、物足りなさは否めない。デュトワとのコンビで幾多の名演を送り出してきたアルゲリッチではあるが、今回はちょっと失敗かな?
2008年07月05日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 音楽のある生活
【書評】アメリカ外交

本書では、アメリカの外交の歴史を建国時代からさかのぼり、系統立てて解説している。時折「大統領トリビア」なるものも挿入されており、難解なないようであるが、読みづらくはない。
本書では、ワシントン以下の大統領を、「ハミルトニアン」「ジェファソニアン」「ウィルソニアン」「ジャクソニアン」の4つに分類。また、多くの古典からの引用も多く、非常に勉強になる1冊である。法学部で学ぶような専門的知識も得ることができる。
アメリカ近代史を俯瞰できる、格好の入門書であろう。
2008年07月05日 | 個別ページ | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評・映画評などなど










